Webレポート

事業名

堤外地の保続利用による流域土壌保全と河川水質改善

【岩見沢市】 「北海道岩見沢農業高等学校 農業土木工学科 農業クラブ 環境アセスメント専攻班」 Webレポート

私たちの活動している空知地方は,広い平野に石狩川が流れている広大な農業地帯です。近年では,温暖化などで,農業が大きな被害を受けたり,河川水が悪くなってきています。そこで,草などのバイオマスから堆肥を作り,土を守り,そして河川を守る活動を行っています。

流域で農耕地が増えると,土の黒さである土壌炭素が減りやすくなります。そうなると,河川水が悪くなっていきます。また,温暖化が進むと,蒸散量が増えて,河川流量が減るばかりではなく,いろんな作物も干ばつになります。しかし,先輩方の研究によって,土壌炭素こそが,すべてを解決する可能性があることが分かってきました。土壌炭素が多い土が,なぜ問題を解決できるのでしょうか?

じつは,大気中の二酸化炭素は植物に吸収されます。この植物を堆肥にして,土に与えると土が黒くなっていきます。土が黒くなればなるほど,二酸化炭素が減り,結果として温暖化はストップします。それだけではなく,黒い土は肥料をホールドする力が強くなり,河川がきれいになります。そして,黒い土は水を貯えることができるので,干ばつに強くなり,作物の収量もアップします。

私たちの研究サイトは岩見沢農業高校で,学校の中を流れる東利根別川に観測ポイントをつくりました。また,土の実験をするために,芝の試験地もつくりました。

河川チームは,河川の周りの土壌炭素が多い方が,河川がきれいになるかどうかを調べていきました。具体的には,観測ポイントで川幅,流速を測定し,河川の流量を計算しました。水質計で水質を記録して,詳しく分析するために,試験管にサンプリングしました。

昨年の先輩方の結果では土壌炭素が多い方が土が水をたくさん蓄えて,洪水になりにくいことが分かっています。そして,土壌炭素が多い方が河川がきれいだという結果も出ています。

土壌チームは,堆肥化した草を与えると,作物や芝の成長が良くなるかどうか,土が黒くなっていくかどうかを調べていきました。芝試験地をつくり,毎週,植生調査や土壌サンプルの採取,堆肥つくり,堆肥を与える試験を行いました。合計30区画の試験区をつくりました。

この区画をつくるために,セオドライドで測量し,測量の結果に従って,試験区の杭を設置しました。1か月に1回は植生調査を行い,土のサンプリングを行いました。気温や湿度,風速の測定を行い,蒸散量の計算を行いました。そして,草の堆肥を作るために,草を刈り堆肥にしました。

草量測定をドローン空撮で一気にできないか検討しました。空撮し,アプリに入れて,GISで解析すると,草丈が色の濃さで表現できます。実際の草量とドローンで計った値を比べてみると比例関係にありました。このことから,ドローンで一気に植生などを計ることができるかもしれません。

そして,土壌含水比が増えると草量も増えることが分かりました。また,土壌炭素が多いと含水比は増えることもわかりました。つまり,土が黒いほど含水比が増えて,作物の収穫量も多くなるかもしれません。そして,バイオマス堆肥による微生物の変化を調べるためにDNAを分析しました。

私たちは,普及活動にも取り組みました。赤平市の防災体験教室や,日本陸水学会に出展して,研究成果を広く伝えてきました。私たちはこれからも,草を堆肥にして,土を黒くし,河川も農業も守っていく活動を続けていきます。

北海道岩見沢農業高等学校 農業土木工学科 農業クラブ 環境アセスメント専攻班
次世代コース

北海道岩見沢農業高等学校 農業土木工学科 農業クラブ 環境アセスメント専攻班

事業名

堤外地の保続利用による流域土壌保全と河川水質改善

私たちは,岩見沢市と近隣市町村の石狩川下流域およびその支流を中心に活動しています。2020年より河川の水質観測と流域の植生調査,流域土壌の調査分析を行い,。この中で,流域に植生帯が多いほど,また,流域土壌の土壌炭素が多いほど,流域の緩衝能力が高くなり水質改善(特に電気伝導度の低下)が見られ,水生生物の出現率も多いことを明らかにしました。この成果は,日本草地学会誌に論文掲載されました(石澤ら2024 日本草地学会誌70巻1号)。