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事業名

残そう味わおう!湿地の文化と食~スゲ〆縄と湿地の恵み料理、環福連携の試み~

【石狩・空知・後志】特定非営利活動法人 人まち育てI&I Webレポート

◆団体名 特定非営利活動法人 人まち育てI&I

◆事業名 残そう味わおう!湿地の文化と食~スゲ〆縄と湿地の恵み料理、環福連携の試み~

 

特定非営利活動法人人まち育てⅠ&Ⅰは、北海道の湿地の恵みを将来に残すため、北海道e-水プロジェクト助成金で「残そう味わおう!湿地の文化と食~スゲ〆縄と湿地の恵み料理、環福連携の試み」という事業を、昨年に引き続き展開しました。

 

 〆縄の材料でもある「 『カサスゲ』の調査・育成と利活用ワークショップ」では、近年湿地の減少に伴って身近な湿地の植物であったカサスゲ群落が消失したことと、地域の高齢化やコロナ禍により地域の〆縄づくりが途絶えつつあることから、カサスゲ群落を保全・保育するとともに、スゲ田によるカサスゲの確保と文化継承を目指しています。カサスゲの残存場所を専門家の濱田崇さんと早春から探索して群落を更にいくつか確認しました。昨年の試行結果から群落周囲のヨシなど高茎植物を除去することでスゲの生育が促進され、刈取りし易くもなることから、5月と 6月に雑草除去作業を皆で行いました。刈取りは、月形町の里山と江別市の石狩川河畔林で7月に11名が参加して行い、探索と保育作業の甲斐あって、昨年の数倍のスゲを収穫できました。水洗いをして夾雑物を除去して揃え、倉庫と納屋で乾燥させました。江別市八幡で20年程前まで神社の〆縄をスゲを刈って綯って奉納されていた武田さんという方に出会い、お願いして9月に11名で大きな〆縄つくりを指導してもらって作れました。宮島沼近くの大富神社に、来春奉納させていただきます。残りのスゲを使っ て、11月に家庭で飾る〆縄づくりのワークショップを12 名の参加で行い、講師の二杉寿志さんにスゲ〆縄の意味合いとともに作り方を教えてもらいながら〆縄をつくり ました。またスゲ田での増産の可能性を探るために採種して育苗箱に播種、今回は数百本が発芽しました。昨年発芽 したスゲ苗は10 月に新十津川の田んぼの横に試験植栽しました。 

 

北海道の湿地の食材として有望な「湿地の恵み料理体験とレシピ開発」では、畑で増殖中のエゾカンゾウの花と、新たに沼で採れるヒシの実を材料に、採取と料理ワークショップを行いました。エゾカンゾウは6月に薬膳師でフードコーディネーターの荒井直子さんを招いて、増殖畑のある余市エコビレッジで開催しました。参加した10名で畑に咲き乱れるエゾカンゾウの花と蕾を摘み取って、講師の案内で次々と皆で料理をしていき、素敵で美しいエゾカンゾウ料理5つが出来上がりました。中国から伝わる生薬『金針菜』の仲間のエゾカンゾウ、この季節に気をつけたいことやエゾカンゾウの効能などを薬膳の観点から優しくお話しいただいて、自分の健康のことなども考えながら皆で美味しくいただきました。ヒシの実は当別町の沼で9月に採取し、10月に料理ワークショッ プを、アイヌ文化を伝承している川上裕子さんを招いて札幌市内で開催しました。16名の参加者の皆さんとヒシの 実の殻を剥き、手分けして料理を作っていきました。美味 しくいただいた後、アイヌ文化についてもお話しいただいて、皆で踊ったり、楽しく学び、心も身体も満たされまし た。

  

また、「湿地環境保全を福祉・療育・医療との連携『環福連携』で進めてみよう」と、石狩川自然再生事業の幌向湿原再生地に植える植物の育成と植栽活動を行いました。 江別すずらん病院の精神科デイケアで苗を育成、今年は10月に再生地への植栽まで行いました。フリースクール札幌自由が丘学園では2年目の湿地環境学習として、苗育成と座学から「湿地アート制作」にも挑戦、完成した作品の中に、湿地を守るキャラクターになって入るというVR体験も行い、最終の第4回目には湿地料理づくりを行っ て、湿地の恵みを体感。より湿地も身近に感じられたようです。

 

「環福連携」では、普段自然体験をする機会の少ない皆さんに湿地や生き物に触れてもらうことが、元気や生きがいにもつながるようです。湿生植物育成活動に長く関わってもらうことで、湿地の再生や保全がゆっくり確実に進んでいくことでしょう。

 

今回の事業では、地元でのスゲ群落からの採取が探索と保育によって増やすことが可能であり、神社に奉納できる〆縄も作ることができることとスゲ田づくりへの第1歩が踏み出せたこと、エゾカンゾウやヒシの実など湿地の食文化も伝えて喜んでもらえること、そして「環福連携」の取組みの重要性をさらに感じられました。

今後はこれら事業を更に展開し、地元産スゲの増殖で家庭用および神社の〆縄づくりや、食文化 とともに体験イベント開催、「環福連携」による環境保全と地域振興を試行~実践していこうと想います。

特定非営利活動法人 人まち育てI&I
e-水コース

特定非営利活動法人 人まち育てI&I

事業名

残そう味わおう!湿地の文化と食~スゲ〆縄と湿地の恵み料理、環福連携の試み~

「野草の魅力・利活用」のみならず、NPOの主な活動である「自然環境保全と福祉・療育・セルフケアその他とのコラボレーション」についても、発信・交流の場です。