Webレポート
手作り魚道による釧路湿原のイトウ個体群の復元2019
【釧路市】道東のイトウを守る会 Webレポート
団体名:道東のイトウを守る会
事業名:手作り魚道による釧路湿原のイトウ個体群復元2019
道東のイトウを守る会は、北海道e-水プロジェクト助成金を活用し、釧路湿原を流れる釧路川支流において釧路自然保護協会やNPO法人トラストサルン釧路といった地元のNPO、地域の酪農家、関係行政の方々と連携・協働して魚道整備をおこないました
釧路川流域では1970年代から1990年代にかけて、農地の生産性向上を目的に激しく蛇行していた川が直線化されました。直線化により加速する流速を緩和させるために、多くの落差工が設置されました。これらの落差工には現在も魚道が整備されておらず、イトウ、サケ・マスなどの魚類の遡上障害になっているものがあります。
本事業では、河川や明渠施設管理者の許可を得て、これらの落差工のうちの一つに魚道整備をおこないました。
魚道は落差工の堤体の30㎝を削岩機で切り下げました。さらに上流側にある護床連節ブロックも魚類の遡上障害になるため、連節ブロックについては40㎝の幅で長さ4mにわたって、撤去をおこないました。連節ブロックの撤去により露出する河床の礫床が増水などで洗堀されるのを防ぐ目的でジオテキネットを敷き詰めて、また連結した玉石を配置することで、明渠保全対策をおこないました。
最後に落差工の下流側に角材を使って、木組みの3段の階段式魚道を設置しました。
今回、製作した魚道は設計していただいた建設コンサルタントの魚道の専門家によると耐久年数がおよそ20年ということです。
今回の魚道の見どころは、市民団体が整備する魚道としては日本で初めて、既存の構造物(落差工)の形を市民が変更するということが実現した点にあります。過去に行われた市民による手作り魚道は既存の構造物の形状を変更せずに、そこに木製の魚道を増築しているというものでした。
行政がダムにスリット(切り欠き)を設けるといった事例は過去に知床などでも行われていきましたが、市民団体が落差工を削ったり、護床連節ブロックを撤去したりというのは全く初めての事例です。今後の魚道整備においても本事業実績は大変貴重な知見になるものと考えます。ご理解と多大なるご協力をいただいた関係行政機関の方々には大変感謝しております。
今回、魚道を設置した箇所の上流と下流には遡上障害となっている落差工が依然として存在することから、来年度以降も引き続き魚道整備など河川環境の再生に努めていきたいと思います。
イトウやシマフクロウ、サケ・マスなどが棲む豊かな釧路湿原の復活を目指して・・・。
道東のイトウを守る会

道東のイトウを守る会
手作り魚道による釧路湿原のイトウ個体群の復元2019