Webレポート

事業名

水中の環境DNAで外来生物の分布調査

【黒松内町】後志地域生物多様性協議会 Webレポート

団体名:後志地域生物多様性協議会

事業名:水中の環境DNAで外来生物の分布調査

 

後志地域生物多様性協議会は北海道e‐水プロジェクト助成金を頂き、後志管内の河川および洞爺湖 周辺の 25 箇所から採水し、サンプル水に含まれる環境 DNA を解析することで外来生物等の分布状況 について調査しました。

 

 「生物多様性基本法」に基づき「生物多様性国家戦略 2010」が閣議決定されたことを受け、生物多 様性の保全や持続可能な自然の恵みの利用などについて様々な施策が推進されていますが、その基礎情 報として外来種や希少種などの生息現状を把握するための生物多様性のモニタリング調査は最も重要で す。しかし、水中に生息する生き物を捕獲や目視で確認するモニタリング調査には大きな労力と費用、 長期間にわたる取組が求められました。環境 DNA は川や海などの水中に溶け込んでいる、生き物の体 表の粘液や糞などとともに自然界に放出された DNA の断片のことです。近年の DNA 解析技術の向上 によって環境 DNA 検出精度が向上すると共に、これまでよりも短期間かつ正確に DNA を解析する技 術が確立してきました。

 

北海道に過去に食用として導入され、その後分布域を広げている特定外来生物ウチダザリガニは、後 志地域の近傍に位置する洞爺湖に既に定着し防除事業が継続的に行われています。この現状を踏まえて、 後志管内への侵入の有無を初期段階で把握することを目的とした分布確認調査を実施しました。後志管 内および洞爺湖を含む8水系の 25 箇所から採水し、サンプル水を濾過器に通しサンプル水に含まれて いる DNA を含む物質を濾紙上に固定しました。冷凍保存した濾紙は北海道大学、兵庫県立大学に送付 して DNA の増幅(PCR)を経た後にターゲット種 DNA との比較検討、解析等を行いました。

 

環境 DNA 分析の特徴として同一サンプルから複数のダーゲット種を検出することが可能なので、ウ チダザリガニの分析と同時にニホンザリガニ、イトウ、アユ、そして淡水魚多種同時分析を行いました。 ウチダザリガニの駆除活動は全道各地で継続されています。防除活動を長 年実施している洞爺湖では、生息数を減らすための防除活動としてダイバー やカゴ罠による採補が行われ、その防除活動を環境学習として普及啓発を行っ ています。防除活動を体験するため 9 月1日に現地見学会を実施しました。 1市、3町から13名の参加者があり、洞爺湖生物多様性協議会の室田会長、 後藤解説員からウチダザリガニに関する解説を受けた後、カゴ罠で採補した ウチダザリガニの計測等を実施しました。

 

洞爺湖ではウチダザリガニに対して様々な捕獲圧を与えることにより固体の小型化傾向はあるが個体 数の減少には至っていないとのことでした。一旦定着した後の防除活動にはコストと時間が必要となる ことを実感し、後志管内への侵入を防ぐこと、侵入の早期発見が重要である事を痛感しました。

 

11 月 28 日に黒松内町(6名参加)、11 月 29 日に札幌市環境プラザ(6名参加)においてアドバ イザーを講師とした勉強会を開催し、今回の調査結果と今後の課題などについて学習しました。

 

調査結果を含め、環境 DNA による生物分布調査の利点と現状の課題についてパンフレットを作成し、 当協議会を構成する 15 町村、2 団体に配布しました。また、今後開催される環境展示会などで同パン フレットを配布し、e‐水プロジェクトの支援によって得られた環境 DNA にかんする最新の知見につい て PR を行う予定です。

 

 今回得られた成果を基礎として、将来的にはウチダザリガニの環境 DNA 検出マニュアルを確立することで、国内の未侵入地域に於ける早期防除活動 の一助となることを目指します。さらに発展的にはアユやモクズガニ、カワ ヤツメなどの内水面漁業資源量を環境 DNA で把握し、これら自然の恵みを 持続的に利用するための新技術を開発したいと考えています。

 

後志地域生物多様性協議会

後志地域生物多様性協議会
助成団体

後志地域生物多様性協議会

事業名

水中の環境DNAで外来生物の分布調査