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急増する水草によって生育が脅かされているマリモの保全活動
【釧路市】阿寒湖のマリモ保全推進委員会 Webレポート
団体名:阿寒湖のマリモ保全推進委員会
事業名:急増する水草によって生育が脅かされているマリモの保全活動
阿寒湖では観光開発が進んだ1960年代以降、湖水の富栄養化が進み、マリモの生育状況が著しく悪化しました。このため、1980年代半ばから公共下水道の整備など湖水浄化対策が進められましたが、近年になって水質が回復を見せる中、今度はその影響でマリモと競争関係にある水草が増殖し、一時は歯止めがかかったかに見えたマリモの減少が急激に進んでいます。そこで本プロジェクトでは、釧路市教育委員会などの関係機関が2014年度から実施する対策検討事業と並行して市民活動による水草の影響調査や除去作業を実施し、残されたマリモの保全を図るとともにマリモならびに阿寒湖の貴重な自然環境の普及啓発に寄与することを目的としました。
初年度となる今シーズンは、専門家を講師に招いた勉強会や現地ワークショップを5月と10月に4回実施することによって、地域住民や一般市民に対して現状および課題の普及を図るとともに、プロジェクトへの参加・協力を呼びかけました(参加者はのべ 210 名)。また、北見工業大学などの研究機関が行うマリモの生育状況調査や阿寒湖の環境調査に参加することによって、科学的な知見の集積に寄与するとともに、市民ボランティアによる調査研究活動や保全活動の実力アップに努めました。
そしてこうした取り組みを踏まえ、6月にボラン ティアダイバーによるマリモと水草の生育状況調査(参加者8名)を、11月に同じくボランティアダ イバーによるマリモ分布地図の作成作業(参加者11名)を実施するとともに、ボランティア活動による調査研究のメリットや問題点、今後の課題などについて意見交換を行いました。
地元住民がマリモの保護団体を設立して組織的な活動に取り組み始めたのは1950年にさかのぼりますが、人の立ち入りがマリモや周辺環境にどのような影響を及ぼすのか評価・予測できないため、これまでマリモ生育地での調査研究活動は大学の教員などプロの研究者に限られ、一般市民が参画する機会は極わずかしかありませんでした。しかし、私たち「阿寒湖のマリモ保全推進委員会」では、いまだ多くの誤解や俗説が流布しているマリモの科学的な知識の普及を図るとともに、多くの時間と人手、そして資金を要するマリモの保護ならびに調査研究活動を継続して行くために、市民が主体的かつ適正に参加することが不可欠と考えています。今回のプロジェクトでは、史上初めてとなるボランティアダイバーによる現地調査が行われ、調査・潜水技術を向上させる必要性が認識される一方、市民目線からの情報発信など新たな可能性も見えてきました。こうした成果と課題を踏まえ、今後も関係機関と協力しながら活動を推進・展開させて行きたいと考えています。

阿寒湖のマリモ保全推進委員会
急増する水草によって生育が脅かされているマリモの保全活動