Webレポート
継続は力なり!-地域の活動を「持続可能な」全道の活動へ-
【洞爺湖町】一般社団法人 洞爺自然環境共生センター Webレポート
団体名:一般社団法人 洞爺自然環境共生センター
事業名:継続は力なり! ―地域の活動を「持続可能な」全道の活動へ―
【事業の背景・目的】
本法人は洞爺湖地域を拠点とし,地域の自然環境と生態系の保全に資することを目的として活動を行っています.法人設立以前から洞爺湖の水圏生態系の保全活動に重点を置き,酪農学園大学とも連携し,特定外来生物「ウチダザリガニ」の継続的な防除活動を実施して科学的データを蓄積してきました.ウチダザリガニの防除活動は,道内の多くの地域において地元有志団体により実施されています.しかし各地で担い手の不足や資金難により,持続的な活動が困難となっています.また科学的知見の不足から到達目標が曖昧であり,意欲の低下が囁かれているのが現状です.そこで本事業は,持続可能な地域主体の防除活動の確立を目指し,これまで洞爺湖地域で蓄積されてきたデータに基づく効果的な防除手法の模索と,新たな担い手の発掘,さらに他地域への情報発信と交流を目的とし て活動を実施しました.
【活動の柱】
①効果的な捕獲手法の確立-過去 9 年間の捕獲データの見直しと課題の整理-
②新たな担い手の発掘-教育・観光行政との連携-
③他地域との情報交流-課題の共有と地域別目標の設定-
④次年度に向けた地元への働きかけ-普及啓発と地域合意形成-
【実施期間】
平成26年4月 ~ 11月
【成果と今後の課題・展望】
①過去の捕獲データより,これまで実施してきた捕獲手法のうち 「アナゴ籠」による捕獲が効率的であることが判明しました.またウチダザリガニは水温19度以上で高い捕獲率が期待できることも判明しています.ただし罠に関しては,生息する水圏の底質が地域により異なるため,その地域の底質環境に合わせて順応的に考案する必要があります.今後は洞爺湖での事例を元に,捕獲手法のマニュアル化と他地域への情報発信を進めます.
② 教育委員会と地元中学校との連携により,地域の小学生の学習団体と中学生のそれぞれを対象に防除体験活動を実施しました.参加者の感想からは,自分たちも環境保全のために活動したいという地域の自然への意識向上が見られたほか,外来種問題は世界中の問題であり,多くの人と議論していかなければならないという広い視野を促すことに繋がったことが窺えました.
ただし新たな課題にも直面しています.中学校への環境教育活動は過去 5 年間継続されてきましたが,活動先の学校は 2年後に統廃合が決定しています.地域の自然環境保全には,地元の若い世代からの関心と意識変化が必要不可欠ですが,その「学習の場」を提供し続ける方法が困難であるのが現状です.また近年の傾向として,外国人観光客が増加しており,防除活動を円滑に進めるべく地域住民のみならず観光客への周知も必要となっています.それらを受け,11 月には洞爺湖町教育研究会にて地域の教職員関係者に対し,これまでの防除活動とザリガニを用いた環境学習について講演を実施しました.講演後には,近隣の中学校職員の方と交流し,次年度からの取り組みについて連携を深めていくこととなりました.また本年度から洞爺湖ビジターセンターで実施されていた観光客向けの防除体験活動と協働し,防除体験ブースの出展を行いました.地域の主たる産業の一つである観光業との連携が,今後の地域の新たな担い手確立の鍵となると感じています.
③・④ 他地域との交流では,野付半島ネイチャークラブの方と協働で防除活動を実施したのち,今後の若い世代への伝達と,さらなる捕獲効率の向上について多くの意見交換がなされ,捕獲罠と餌の仕掛けについて情報を共有しました.また地元への報告会では,これまでの成果報告と課題の見直しに加え,外来種防除の専門家である講師をお招きし,今後の洞爺湖が目指すべき防除目標の設定と,市民と行政が協働した継続可能な体制の確立が必要であることが議論されました.洞爺湖でのウチダザリガニ防除活動は,転換期を迎えています.生物多様性協議会の元で,約10年間の長期に渡り防除活動を実施してきた洞爺湖地域ですら,約束された継続的な資金源が獲得できていないのが現状です.
今回助成いただいたことにより,これまでの取り組みの見直しと課題整理,他地域との交流や継続的な「学習の場」の提供方法の模索,さらに地元教育・観光行政など各方面との次年度に向けた連携体制を確立することが出来ました.今後は地域目標を様々な関係者と共有すること,さらには洞爺湖地域のみに留まらず,道内各地への情報発信に向けて活動を継続していきます.

一般社団法人 洞爺自然環境共生センター
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