Webレポート

事業名

フィールドワーク「豊平川水環境」観察会

【札幌市】特定非営利活動法人水圏環境科学研究所 Webレポート

団体名:NPO 法人水圏環境科学研究所

事業名:ワークショップ「豊平川の水環境」フィールドワーク

活動場所:札幌市 豊平川中流 活動日(期間) 平成 26 年 8 月 17 日(日)

参加人数:8名

 

活動概要

□豊平川の水質環境を3地点においてパックテスト等で把握した。

□水質のテスト項目は、水温・気温・pH・溶存酸素・COD・無機態窒素(硝酸態窒素・亜硝酸態 窒素・アンモニア性窒素)・リン酸態リン。(結果は巻末)

 

参加者

□本法人会員等:6名(佐伯顧問、辰巳理事、奈良部理事、柿沼会員、竹本会員、佐々木会員)

□会員家族 :2名(うち小学生1名) スケジュール

□豊平川藻南公園地点 集合、全体的な注意、調査目的を説明後、豊平川で採水(代表者)、観測・パックテストを行った

□札幌豊平川さけ科学館地点 移動し昼食後、豊平川および支川真駒内川で採水(代表者)、観測・パックテストを行った

 

質疑応答

□質問:プランクトンとは何ですか

 回答:水に住む生き物を普通「泳ぐもの」 「漂う者」 「底に住むもの」の3つに分ける。 そのうち「漂う者」をプランクトンという。

□質問:いままで測定した中で一番きれいだった川はどこですか

 回答: 「きれい」と言っても、見方で変わる。国から発表されるランキングは、大きな川の下流部が多く、ランキングにない中小の川できれいな川はたくさんある。しかし川が健康かどうかは見た 目だけではわからない。意外と大事なのは川の印象。

□質問:河道内の樹林は、洪水流下の障害となると思うが、単純に保全して良いものなのか

 回答:指摘の通り、単純ではない。今の河岸植生は当然潜在植生とは異なっているだろうし。 (活動内容の続き) ただ、河畔林は動物の通り道(グリーンコリドール)となっていて、連続性にも意味はあるし、水温上昇の抑制や餌の供給にも大事な働きをしている。単純に伐採して良いものでもない。

 

特記事項:五輪大橋下流の低水温や低pHは、支流からの山地流出水や地下水によると思われ る。リン酸態リンが比較的高いのは、支流からの市街地排水の流入と考えられる。今後の調査が望まれた。 

 

メモ

今回は、8月9日をフィールドワーク予定日としたが、台風増水のため順延された。 お盆の時期で、参加者が少なかったが、参加者からは、水環境をじっくり、また話しあっ て観察できたと好評であった。来年度は、時期を変えて実施したい。

 

豊平川の水環境について

■豊平川は、どんな川?

 豊平川(とよひらがわ)は、長さが 70km あまり、流域面積(川が雨水を集める範囲)が 900km2 あまりの川で、 札幌市の市街地を流れる川のうちで最大です。石狩川(いしかりがわ)に合流するので、石狩川の支流ということになります。札幌市の中心は、この川がつくった扇状地(せんじょうち)の上にあります。そのため豊平川は、水の利用でも、 洪水から町を守るためにも、環境を保つ上でも、札幌にとって最も大切な川です。

 

■豊平川は急流?

豊平川は、わが国の大きな町を流れる川としては、流れが急な川として知られています。川の傾きを勾配(こうばい)と言いますが、ふつう勾配が 1:200 を超えると土石流の心配をする必要があります。ところが豊平川の国道 12 号の東橋 (あずまばし)と真駒内の藻岩橋(もいわばし) の間では、8km で 50m の高低差がありますから 1:160 くらいの勾配となります。それで、かつては上流から多くの土砂を川が運んできて、札幌扇 状地を形作ったのです。 今は、いくつかのダムができて、上流側から土砂 があまり運ばれなくなっています。このため、扇状地の頂点から一番下流のダム(藻岩ダム)まで の間は、川底の石や砂利が下流に流されてしま い、岩がむき出しになったところが多くみられるようになりました。この30年あまりの間に起こったことです。

 

■豊平川の水はどのように利用されている?

毎年、夏になると四国や首都圏で水不足のニュースが流れます。札幌市では、そのようなことはあまり起きません。それは、豊平川の水 を上手に使っているからです。一年間に川を流れる水の大部分は、雪解けの時期と大雨の時期に集中します。このため、ダムを作って水 をためると、安定して水を使えるようになります。また、水の調節によっ て洪水の危険を減らすことができます。 豊平川の上流には豊平峡ダムがあるほか、支流の小樽内川には定山渓ダムがあり、水道と発電と洪水調節に利用されています。こ のほかに、定山渓と藻南公園の間に、砥山ダムと藻岩ダムという 2 つ の発電用ダムがあります。

 

■ダムで止められるもの?

ダムによって上流からの土砂が止められる話を前にしました。このほかに川の中を行き来する魚もダムから上流へは行け なくなりました。このため、海と川を行き来するサケ・マスやハゼ、アユなどは、昔より狭い範囲で子供を残しています。

 

メモ

北海道にはサケ・マスの仲間がもともと6種類くらいいました。このうち、食べものとして大事なのは、サケ・カラフトマス・サクラマスの3種 です。これらはみな、川で生まれて海で大きなり、また川に帰ってきます。海から上がってきた親魚は、川底の砂利を掘って卵を産みま す。川の生活が最も長いサクラマスは上流で、最も短いカラフトマス(日本海沿岸には多くありません)は中流の下の方で卵を産みま す。中間のサケは扇状地の中央あたりで卵を産みます。豊平川では、サケの産卵はJR橋のあたりで多くみられます。このあたりは、川底にわき水があり、川の水温の低くなる時期でも発生(卵から子どもの魚になっていくこと)に必要な温度になっています。

 

■豊平川の水はきれい?

豊平川の水は、きれいなのでしょうか?雨が降ったときの川は泥水のようで、きたなく見えます。このような濁りは、おも に土の細かい粒によるものです。普段の川水はもっと透明できれいに見えます。さてこの透明な水はきれいなのでしょう か?道庁や中島公園、円山公園などには池があります。池の水は濁って見えます。注意して見ると濁りは緑色を帯びていることがわかります。これは、水の中に小さな植物プランクトンがあるからです。植物プランクトンや水生植物が多すぎると、それらが枯れたものの分解が追いつかなくなり、水はきたなくなります。植物プランクトンは、光のエネルギーを使って水中に溶けている炭酸ガスと栄養分で増えていきます。炭酸ガスは水中になくなっても空気中から補充されますので、おおざ っぱには栄養分によって植物プランクトンの量が決められることになります。栄養分とは窒素とリン(の化合物)です。 札幌市の西側に広がる山々のなかには、むかし金銀などの鉱山があった山がいくつかあります。手稲山もそうですし、 豊平川の上流にもそのような山があります。また定山渓に温泉があり、温泉水には普通の川ではそれほど多くない成分が含まれています。豊平川の水にもいろいろな金属が溶け込んでいることがわかっています。このようなものには、人の健康にとって良くないはたらきをするものもあります。

 

メモ 水質をみるには、いろいろな項目があります。

●pH(ピー・エイチ、水素イオン濃度)酸性かアルカリ性か。7 で中性、小さいと酸性で大きいとアルカリ性

●COD(シー・オウ・ディー、化学的酸素要求量) 濁り以外の汚れ、3mg/L 以下だとまずまず

●リン酸 栄養のひとつ

●窒素 栄養のひとつ

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5周年記念特別活動

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