Webレポート
十勝海岸湖沼群の生物多様性調査およびラムサール条約登録への啓蒙活動
【大樹町】一般社団法人湿原研究所 Webレポート
団体名:一般社団法人 湿原研究所(大樹町)
事業名:十勝湖沼群の生物多様性調査およびラムサール条約登録への啓蒙活動
事業概要:十勝海岸湖沼群地域の総合自然調査を行う。並行して、地域住民に対する啓蒙活動を本格化 するために、地域住民とともに道内ラムサールサイトの視察研修会を開催、十勝海岸湖沼群地域におけ るセミナー、自然観察会等を開催する。
一般社団法人湿原研究所は、e-水プロジェクト助成金で、十勝海岸湖沼群の生物多様性調査および、 ラムサール条約登録に向けた啓蒙活動を行いました。 湿原研究所のフィールドである十勝海岸湖沼群は、十勝海岸に並ぶ4つのラグーンを中心に広がる湿 原地帯で、ナチュラリスト・学者等から水辺の自然度の高さを称賛されてきました。しかし、その評価 を裏付ける調査研究がほとんどないなどの理由から、地元行政や地域住民からは価値が理解されず、周 辺酪農業等の影響による湖水域の水質汚染が懸念されています。
湿原研究所では、地元住民の民意を得て自然豊かな水辺を地域資産として育てることを目標に、水辺 の保全とその賢明な利活用についての研究を進め、さらに、この貴重な自然環境を知らしめるべく、専 門家を招聘してセミナーや自然観察会を開催し、地域住民との総合的な学習の場をつくりました。
学習の場は二つ。平成25年4月~11月に二つの講座を定期的に開催しました。その一つ「柏林講 座」は、水辺の動植物や水環境について、本や資料を活用した読書会です。もう一つの「晩成学舎」は 一泊二日の、座学と自然観察会を組み合わせた総合的な学習・交流講座です。内容は多岐にわたり、小 学生から80代まで幅広い年齢層が参加しました。
講座内容を列挙します――「鳥類・底生生物・トンボ等の昆虫について」、「十勝海岸湖沼群のフロ ラ研究」、「北海道の森林と生態」、「植物標本作成」、「林床植物の生態と保全」、「建築・景観・まちづ くり」、「ウチダザリガニと外来種問題」、「生花沼の水環境」、「日高山脈の成り立ち」、「晩成・浜大 樹の植生」、「人工湿地と酪農排水浄化」そして、森の巨人・宮脇昭氏を招いた特別講座「生態学とは何 か」等々。各分野の専門家による講座は本当に面白く、自然の見方が根本から変わりました。参加者か らも、勉強になったという言葉だけでは表せない深い講座だった、という感想が寄せられました。
最後に、地域住民が参加した総合自然調査について。地元の人々と月に2回、タイキ・フローラと題 した植生調査を行いました。専門家が付いて、植物や水の動きの見方に始まり、標本作成、植物の同定 などを深く広く学ぶうち、視野も広がりました。靴の洗浄やゴミ拾いも実践しましたが、一番大きな変 化は、花にしか興味のなかった人が貴重な水辺に魅せられて、自然保全に目を向けるようになったこと です。
今後はより多くの人々、地域と交流しながら、十勝海岸湖沼群の生物多様性の保全とワイズユースに向 け、総合自然調査と健全な環境経営を進めて参りたいと思います。

一般社団法人湿原研究所
十勝海岸湖沼群の生物多様性調査およびラムサール条約登録への啓蒙活動